大学時代、同じクラスを取っている２コ上の先輩とつきあい始めて、 
（うちの大学の一般教養は４年間で取りたいところを履修するシステム） 
「僕のお宝見せるから、うちに来ない？」と誘われた。 
他の大学で教授をやってるお父様と、和服の似合う奥様然としたお母様が出迎えてくださった。 
初カレということもあって、カチンカチンに緊張しながら、家の中に入った。 
…まではいい。 

もうね、もんのすごい汚屋敷。 
廊下まで本があふれてて、しかもそれを変だとは、両親も本人も思ってない。 
「学者の家だから、本は捨てられなくってね～」なんて笑ってる。 
でもあふれてるのは学術的な本だけじゃなかったし、明かなゴミも間にぎっしり見えたぞ。 

極めつけは先輩の部屋。床が見えない。なんかオタッキーなフィギュアもびっしり。 
おまけに天井がしなっている。 
「お宝」といっていたのは、天井裏の収納スペースに詰め込まれた雑誌だった。 
「これね、手に入れるの苦労したんだよ」 
…創刊号から全部という、「花とゆめ」だった。 
どうやって手に入れたかをうっとりと話す先輩を無視して踵を返し、 
逃げるように家を出て、タクシーに飛び乗って帰った。私には無理だった。