私は叫んだ 上福岡もや乃（70）

ある日、電車で座席に座っていると、
若い男が私の方を見て一笑したのだ
目をそらし素知らぬ顔をしたが、
どうにも視線を感じ顔を見上げると、
やはり男が私の顔を見てにやにやしているのだ

笑ったね？その心笑ってるね？

私は激昂した
最近の若者に見られる高齢者に対しての不躾かつ不敬な態度に憤怒していたからなのだ

私はだね、アンタよりずっと長いこと生きてるんだよ！
人生の苦労も知らないお主なんぞに笑われる覚えはないのだ！

男はなおも私を俯瞰するように見つめ、冷笑を浮かべているのだ

うるさい！あっち行け！顔も見たくない！

気がつくと私は駅のホームに出され、
駅員に取り押さえられた
薄情にも駅員はこちらの悲痛な叫びに耳を傾けず、
私が静まるまで押さえつけたのだ。

あれほど叫んだのは何年ぶりだろう
記憶の低下した私は思い出すこともできない。

だがしかし、私も1人の女。
譲れないものがあるのだ。
全国の愚かな若者が更生するまで私は叫び続けるつもりだ！

むむ！
そこのアンタ、今笑ったね？
その心、笑ってるね？