564: BANGKOK1QQ ◆BANGKOK1QQ 2008/04/05 12:30:14 ID:JEvOBIO7
ラーメン屋に行くといつも亡くなった親父を思い出す。 

親父が生まれたのは戦時中で日本の敗色が目に見えていた時だった。 
親父4人兄弟の末っ子だ。 

親父はは両親(つまり俺の爺さん婆さん)を早いうちに無くし、 
15歳上の長男(つまり俺の叔父)が父親代わりで育てられた。 
間に女の兄弟2人がいたが、順々に嫁に行った。 

長男が結婚すると、親父はお嫁さんに余りよい顔をされなくなり、家に居づらくなった。 
親父は中学を卒業すると、着の身着のまま東京行きの夜行に乗って上京した。 

(つづく)

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565: BANGKOK1QQ ◆BANGKOK1QQ 2008/04/05 12:30:32 ID:JEvOBIO7
(つづき) 
東京に着いた親父を待っていたのは、「金が無い」と言う現実だった。 

上野の公園を何もすることが無くうろうろしていると、初老の男性が親父に声を掛けた。 
「坊主、こんなところで何をしているんだ?」 
親父はその初老の男性に東京に出てきた事情を話した。 

「坊主、とりあえず兄さんが心配しているから連絡しなさい。腹が減っただろ、付いてきなさい。」 
そういうとその男性は近くにあったラーメン屋に入り親父に言った。 

「好きなものを頼みなさい。代金は心配しないで。」 
親父はラーメンを頼んだ。するとその男性は 
「おばさん、餃子もつけてあげてよ。若いんだからどんどん食べなさい。」 
親父はだまってラーメンと餃子を食べた。空腹で食べ物に誘われて来たのだが、 
腹が満たされてくると、だんだんとこの男性に対する不信感が芽生えてきた。 

それを見越したかのように男性は言った。 
「怪しまなくてもいいよ。俺はこの近くで建設業をしているんだよ。 
今、人手不足でな。知っているだろ、今度、東京でオリンピックがあることを。 

それでいま、東京の街中に自動車専用の道路を作っているんだ。凄い話だろ? 
でもな、若い人は建設業を馬鹿にして人が集まらないんだよ。どうだ、坊主。 
恩を売るわけじゃないけど、俺のところに住み込みで来ないか?兄さんには俺から電話してやるから。」 
行く場所が無かった親父はその男性に付いて行った。 
(つづく)

566: BANGKOK1QQ ◆BANGKOK1QQ 2008/04/05 12:30:43 ID:JEvOBIO7
(つづき) 
親父はその社長の下で、一生懸命働いた。年を重ねて親父が22歳になったとき、 
社長の紹介で取引先の娘を嫁にもらった。つまり俺の母だ。 

程なく俺が生まれ、妹が生まれた。 
親父は、俺と妹をいつも近所のラーメン屋に連れて行ってくれた。 
親父は俺と妹が美味しそうにラーメンを食べるのをいつも笑顔で見ていた。 
親父はいつも餃子をつまみにビールを飲んでいた。 
それが親父の楽しみだったのだろう。 

ビールを飲みながら、父親が東京に出てきてからどんな暮らしをしていたかを、
何度も何度も俺と妹に話した。 

今の社長に拾われて生まれて初めて食べた餃子が、この世の物とは思えないほど美味しかった話や、 
東京オリンピックに間に合わせて首都高速を作り、誰もまだ走っていない道路を一番で走った話など。 
俺と妹は「お父ちゃん、また同じ話?もう何回も聞いたよ。」と言うが、父親は笑顔で 
「そうだったかな。父ちゃん、頭悪いから忘れちゃうんだよ。」と毎回言う。 

そんな幸せな時間が突然途切れると誰が予想しただろうか。 
(つづく)

567: BANGKOK1QQ ◆BANGKOK1QQ 2008/04/05 12:31:01 ID:JEvOBIO7
(つづき) 
俺が小学5年の時、現場で親父が倒れたと母に電話があった。 

俺と妹が学校の先生に連れ添われて病院に着いたときには、すでに親父の意識は無かった。 
母は涙を流しながら落ち着い声で、「お父ちゃん、疲れて眠っているんだよ。 
疲れすぎてもう起きないかもしれないって先生が言ってたよ。」と俺たちに言った。 

人が氏ぬという事は知っていても、目の前で父親が氏ぬところを目の当たりにして混乱している俺は 
こともあろうに、「もうラーメン食べられないのかな」思った。 

その日の晩、親父は亡くなった。 

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あれから22年、今は俺が父親になっている。 
長男は今度、小学2年になる。長女は年長組だ。 

二人は俺と一緒に近所のラーメン屋に行くのが楽しみらしい。 
俺は二人が美味しそうにラーメンを食べるのを見ながら餃子をつまみにビールを飲む。 
飲みながらいつも俺の親父の、つまり彼らが会えなかった彼らのお爺ちゃんの話を聞かせている。 

「おとうちゃん、また同じ話?」と息子は言う。
「そうだったか?ま、いいじゃないか。」俺は答える。 

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引用元: 【泣ける話】