589: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/10 22:46:35 ID:1qYjTR8a0
俺「嬉しいって…何がですか?」 
カドワキさんは、そんな俺の言葉も意に介さず続けた 

カドワキ「誰かと一緒だと…」 
カドワキ「こんなに嬉しいんだね…」 

俺はその言葉に胸がきゅんとしたが、何も言えず 
そして、カドワキさんもそれだけ言うと 
疲れてしまったのか、まったく喋らなくなった

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590: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/10 22:50:41 ID:1qYjTR8a0
しばらく車内は沈黙のまま病院に向かった 
カドワキさんのお父さんはどんな人なんだろう? 
さっきの写真の人?それにしても何故食べ物くらい買ってこないのか? 
今はお父さんは家にいないのか? 
いろんな考えが頭を渦巻いた 

そして小十分車を走らせると、病院に着いた 
ドアを開けて「さ、行ける?もう大丈夫ですよ」と言ってカドワキさんの手を取る 
カドワキさんはもう限界のようで 
無言のまま俺に手を取られ、病院に入った

591: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/10 22:56:24 ID:1qYjTR8a0
まあ予想通りというか、カドワキさんは典型的な風邪だった 
しばらく何も食べてないと伝えると、点滴を打つことになったので 
俺はベッドで朦朧としてるカドワキさんに 
「これでもうバッチリですね。」と話しかけた 

するとカドワキさんは寝たままこちらを見上げて、口元だけで笑ってみせた 
それを見て、これならもう安心だな、と気が抜けた 
点滴が終わるまで駐車場に戻って煙草を吸う事にした

592: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/10 23:21:03 ID:1qYjTR8a0
1時間ほど経って、カドワキさんを迎えに行く 
相変わらずフラフラな状態は変わらなかったので 
病院のお金と薬代は、俺が立て替えた 

俺が腕を引いて、カドワキさんを車まで連れて行く 
俺「点滴もしたし、これでひとまずは安心です」 
するとカドワキさんは笑顔になって 
「ありがとう」とだけ言った

593: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/10 23:24:45 ID:1qYjTR8a0
帰りの車も、カドワキさんは点滴を打って眠くなったのか終始無言だった 
俺も、負担にならないようにゆっくり運転して、黙って帰った 

家に着いて、カドワキさんを部屋まで連れて行く 
カドワキさんはやはりよっぽど辛いのか、着替えることもなくベッドに倒れ込んだ 
俺「もらった薬はここに置いておきます」 
カドワキ「うん…」 

俺「ゼリーとかバナナがあります。夜になったら食べて、ちゃんと薬飲んでくださいね?」 
カドワキ「うん…」

594: 名も無き被検体774号+ 2013/04/10 23:25:17 ID:TF+u+ZIC0
駐車場についたその時突然、まばゆいばかりのスポットライトが飛び出し、病院の屋上を照らし出す 
「N-E-E-Tは」「どこだ!」屋上から旅館の親父さんの声が響く 
詰め掛けたオーディエンスは旅館の親父さんの久々のステージに期待で爆発しそうだ 
今晩も伝説のリリックが聴ける。田舎生まれ田舎育ち。本物のラップが聴けるのだ 
キャップを斜めに被りオーバーサイズのTシャツをきた旅館の女将さんがターンテーブルをいじりながら目で合図する 
重たいサウンドがスピーカーから響く。ショウの始まりだ 
 (ドゥ~ン ドゥンドゥンドゥ~ン キュワキャキャキャッキャキュワキャ!) 
 作地減少! 農費上昇! 過疎で閑散! 飯だ母さん! 
 冷たい世間を生き抜き! 冷たい麦茶で息抜き! 
どこだRYO-KA-N-経営-MONDAI! そんな毎日リアルなSONZAI! 
 SAY HO!(HO!) SAY HO HO HO HO!」 
女将さんのプレイは好調だ。オーディエンスの熱狂はこわいくらいだ 
まだ俺らの時代は始まったばかりだ、そんなメッセージがマシンガンのように旅館の親父さんの口から飛び出していく。

597: 名も無き被検体774号+ 2013/04/10 23:32:49 ID:MHBlpaMnP
>>594 
おまい嫌いじゃないよ

595: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/10 23:27:06 ID:1qYjTR8a0
俺「ここにタオルも置いときますね。汗かいたらちゃんと拭くんですよ?」 
カドワキ「うん…」 

俺もすっかり安心して、帰ろうとする 
俺「もう大丈夫です。何かあったら、電話してください」 
そう言って部屋から出て行こうとした 

カドワキ「あ…」 
カドワキさんが不意に俺を呼び止めた

596: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/10 23:31:05 ID:1qYjTR8a0
俺「どうかしました…?」 
カドワキ「まだ…その…」 
とてもか細い声で話しかけてくる 

カドワキ「氷…枕…」 
俺「え?でも…そんな作り方とか知らないですし…」 
カドワキ「や…やだ…」 
正直驚いた 普段強気なカドワキさんが 
こんな風に駄々をこねてわがままを言うなんて、想像がつかなかった

598: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/10 23:37:17 ID:1qYjTR8a0
カドワキ「台所の下に…あるから…」 
俺「は…はあ…」 
それを無視することもできず 
俺は言われるまま、台所下の収納を探す 

すると、グレーのゴムで出来た枕?が見つかる 
これに氷水を入れればいいんだな、と分かり 
急いで水道水と冷凍庫の氷を突っ込んで、氷枕をこしらえた。

599: 名も無き被検体774号+ 2013/04/10 23:42:24 ID:b8MCgzqMP
なんだかこんな女性にめぐり会いたいな。

600: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/10 23:43:25 ID:1qYjTR8a0
このまま頭を乗せたら冷たかろう、と思って 
台所にあったタオルを巻いて、俺特製氷枕の完成だ 
それを急いでカドワキさんの待つ部屋に持っていく 

部屋に戻ると、カドワキさんはもうグッスリ眠っていた 
そのまま起こさないようにゆっくり頭を持ち上げて 
枕を氷枕に入れ替える 
少し揺らしてしまったが、一向に起きる気配はなかったw

601: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/10 23:49:05 ID:1qYjTR8a0
さっきまでとても辛そうにしていたのが、氷枕に入れ替えて 
より一層心地よく眠っているように見えたので 
俺は嬉しくなって、一人で「良かったね」と呟いてしまった 

そのまま「薬はここに置いときます。ちゃんと食べて飲んでね。」 
というメモだけ残し、俺はカドワキさんの家を後にした 
できる事なら、もう少し寝顔を眺めていたかったけど 

俺が宿を出てから、実に2時間以上が経っていた

602: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/11 00:12:57 ID:aKJ0yOno0
俺はこの間、宿に連絡するのをすっかり忘れていた 
いくら暇な時間帯とは言え、無断の長時間外出は許されない 
そのことを、宿に戻ってから気付いたのだ 

玄関から入ると、番台に親父さんが立っていた 
親父さん「おかえり。どこに行ってたの?」 
俺「すいません…全然連絡もなしに外に出て行ってしまって…」 
親父さん「さすがに困るよ。最近、おかしいんじゃないのかい?」

604: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/11 00:16:11 ID:aKJ0yOno0
普段優しい親父さんも、この時ばかりはだいぶ怒っていた 
親父さん「仕事なんだから…許されないよ、こんな事」 
俺「本当に、すいません…」 

もうだめだと思った 
カドワキさんとのひとときの時間の代償に 
俺は今日で終わりなんだなぁって思いもした 
それだけ、無責任な事をしたんだって、自覚してたんだ

605: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/11 00:19:03 ID:aKJ0yOno0
親父さん「…で、どこに行ってたの?」 
俺「はい…?」 
親父さん「ワケがあるんでしょう。君が理由もなくそんな事しないって知ってるから。」 
親父さん「話してよ。」 

親父さんは、厳しい表情をしながらも、俺の事を見つめて 
俺の言い分を聞こうとしてくれた 
それで、俺は勇気を持って話そうと決心した

607: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/11 00:21:55 ID:aKJ0yOno0
カドワキさんが氏ぬほど体調を崩して、苦しんでいたこと 
俺はいたたまれなくなって、全てを投げ打って助けに行ってしまったこと 
普通の大人なら、到底聞き流して「理由」とも捉えてくれない事を 
俺は一生懸命に親父さんに伝えた 

すると、親父さんも玄関の方に出てきて、煙草を吸い始めた 
親父さん「なるほどね…」 
親父さんは固い表情を保ちながらも、俺に「〇〇君も吸えば?」 
と優しく促してきた

609: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/11 00:24:48 ID:aKJ0yOno0
促されるまま、俺も煙草に火をつけた 
親父さんは厳しい表情のまま、淡々と話を続けた 

親父さん「なるほどね…でも、ダメだろ?仕事なんだから」 
俺「そうですよね…」 
親父さん「でもさ」 
俺「え?」

610: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/11 00:28:16 ID:aKJ0yOno0
親父さん「困ってる人を見ると、ほっとけない。」 
親父さん「誰かの力になりたい気持ちは止められない。」 
俺「え…?」 
親父さんは粛々と語り続けた 

親父さん「そうだろ?」 
俺「はい、そうです…」

611: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/11 00:31:19 ID:aKJ0yOno0
親父さん「そんでもってさ」 

親父さん「〇〇君は、カドワキさんの事が大好きだ、だろ?」 
俺は突然の指摘に思わず吹き出しそうになった 
でも、それは間違いなく本当の事だったんだ 

俺「大好きです」 
俺が親父さんの方を見て真剣にそう言うと、親父さんは大声で笑い出した 
親父さん「やっぱりかw」

612: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/11 00:34:19 ID:aKJ0yOno0
親父さん「今回の件は、事が事だし、大目に見るよ。」 
親父さん「でも、次はないからね」 
そう言うと、親父さんは俺の肩を叩いて「恋する少年!」 
と言って笑ってみせた 

その瞬間、俺の中で鬱屈として、刻々と溜まっていた何かが一気にはじけて 
俺はどうかしたのか、本当に何故か分からないが、 
その場で涙を流して泣いてしまった

613: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/11 00:37:55 ID:aKJ0yOno0
大の24の男が、古びた宿の玄関で涙をこぼして泣いている 
その光景は、はっきり言って相当痛いものだったろうな 
でも、俺はそんな温かい言葉をかけられてしまって、本当に崩れてしまった 
ちょっとでも、こんな仕事辞めてやる、と思っていた自分が情けなくて 
もう、本当に言葉にできない感情だった 

俺が泣いているのを見て、親父さんは笑うのを辞めて 
「なんか辛かったみたいだな」と優しく頭を叩いた

614: 名も無き被検体774号+ 2013/04/11 00:40:19 ID:Nrafdg7m0
面白いけど終わりまで 
めちゃくちゃかかりそうだなwww

615: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/11 00:43:08 ID:aKJ0yOno0
どうしようもなくなって、子どものようにただ涙を流すだけの俺 
親父さんはそんな中でもまったく動揺しなかった 

親父さん「溢れる涙も青春だな」 
俺はボロボロ泣いてしまって、上手く返答ができない 

親父さん「歳の割に◯◯君は本当に子どもだね。子どもだよ」 
親父さん「でも大丈夫さ」 
親父さん「それでいて凄くひたむきだから。」

616: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/11 00:46:04 ID:aKJ0yOno0
親父さんはそう言ってニッコリ笑うと、そのまま奥に入っていった 
「ひたむきだ」 
そんな事を言われたのは人生で初めてで、俺は今でも忘れない 

この時の親父さんの言葉があったから、今の俺もあるんだと思う 
こんなクズの俺の事を、そんな風に思ってくれる親父さんに出会えたことは 
本当に、俺の人生という人生を大きく変えてくれた

617: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/11 00:47:00 ID:aKJ0yOno0
今日はここで落ちます 
続きはまた明日書きます 

見てくれてる人ありがとう 
なんだかんだ言ってもう佳境なので…

618: 名も無き被検体774号+ 2013/04/11 00:48:17 ID:5nmyQRvk0
>>617 
終わりまで末長く待ってます

619: 名も無き被検体774号+ 2013/04/11 01:37:30 ID:GYpfxf/vO
>>617 
最初から見てます 
最後まで応援してます

647: 名も無き被検体774号+ 2013/04/12 21:06:02 ID:DsbzykhI0
(ノ`□´)ノ⌒┻━┻まだか

648: 名も無き被検体774号+ 2013/04/12 22:26:54 ID:oK3sweov0
まとめさせてもらいますね^^

651: 名も無き被検体774号+ 2013/04/13 00:21:57 ID:sQ31iIOy0
>>648 
わざわざ喧嘩の火種になるようなことすんなよ。

649: 名も無き被検体774号+ 2013/04/12 22:29:55 ID:GrdGVm9X0
今日はこいよ

650: 名も無き被検体774号+ 2013/04/13 00:02:27 ID:MeHnGOD+0
はよしてぇーやー

652: 名も無き被検体774号+ 2013/04/13 00:48:43 ID:eov1t3THi
おいついた! 
楽しみに読んでます!

655: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) 2013/04/13 06:56:29 ID:SAt5D4HT0
うわぁ、頑張ろう。

668: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 17:05:29 ID:kppVQiBj0
こんにちは 
お久しぶりです 

遅くてごめんなさい 
続きを書いていきますね

669: 【Dliveetv1347375601300903】 本日の利用料 4,763円 2013/04/14 17:06:33 ID:qZQHsZg20
キタ━━━━ヽ(´(・)` )ノ━━━━!!!!

670: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 17:09:31 ID:kppVQiBj0
カドワキさんが倒れた一件以来 
俺はまたやる気というか、エネルギー?みたいなものを取り戻して 
一生懸命働くようになっていた 

でもあれから、カドワキさんから特に連絡がなくて 
もういいんですか?みたいなメールを打っても返信がなくて 
俺はけっこう心配していた

671: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 17:12:19 ID:kppVQiBj0
まったく連絡もしないほど不義理な人でもないだろうし 
かと言って連絡もないし 
休んだ分仕事も忙しいのだろうか?なんて考えてた 

そろそろ流石に治ったろうな…と思っていた頃 
宿の仕事が一通り終わって一息つく時間帯 
確か夜の9時か10時くらいだったと思う 

部屋でゆっくりしてたら呼ばれたんだ

672: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 17:26:03 ID:kppVQiBj0
親父さん「〇〇君、お客さんだよ」 
そう言ってニコニコしながら親父さんが来た 
俺にお客さん?と思ったけど、言われるまま玄関に行った 

カドワキ「こんばんは…」 
俺「あっ…」 
カドワキ「こんな時間に、ごめんなさい」 
俺「あ、いえ…」

673: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 17:30:04 ID:kppVQiBj0
カドワキ「この前は本当にありがとう…ございます」 
俺「いやいや…もう、いいんですか?」 
カドワキ「ええ、すっかり」 
そう言うと、笑って小さくガッツポーズしてみせた 

俺「そっか、よかったです本当に…」 
カドワキ「あの…お金なんですけど…」 
俺「ああ、それなら別にいいですよ」

674: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 17:33:43 ID:kppVQiBj0
カドワキ「アナタが良くても私が良くないんで…」 
相変わらず、トゲのある言い方をしてくるw 
でもそれ聞いてすっかり元気になったんだなって思えた 

彼女は真剣に「診察台と薬代で…」と言いながら 
小さなお財布から、お金を取り出して渡してくれた 

俺「なんだかわざわざすいませんw」 
カドワキ「いえいえ、こっちですから…」

675: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 17:41:50 ID:kppVQiBj0
カドワキ「いや本当、この前は突然…」 
カドワキ「助かりました…ありがとうございました」 
よっぽど悪いと思っていたのか、何度も何度もお礼を言ってくる 

俺「いえいえ、本当に気にしないでください」 
俺もひたすらそう返すしかなかった 

俺「じゃ、お金も確かにもらったので…いいですかね…?」 
カドワキ「あ、その…ちょっと待って下さい」

677: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 17:46:47 ID:kppVQiBj0
カドワキ「少し散歩にでも行ってみませんか…?」 
俺「え?」 
あのカドワキさんが、俺を呼び止めている 
好きな人が呼んでいる!ドキッとしちゃったよw 

カドワキ「その辺を…ぷらぷらと…」 
気恥ずかしそうに、そう呼び止めてきた 
俺「え、え、いいですけど…いいんですか?」 
マジで焦って変な喋り方になってたかもしれない

678: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 17:49:29 ID:kppVQiBj0
カドワキ「や、やっぱりこんな時間だしアレですか…」 
俺「あ、いえいえ、少し外の風浴びるのもいいんじゃないですか…w」 
カドワキ「じゃあ…」 
と言って、2人して玄関から出た 

俺が玄関から出て行く瞬間、 
番台の奥から親父さんが出てきて 
ニコニコしながら俺のことを見ていた

679: 名も無き被検体774号+ 2013/04/14 17:54:11 ID:zY7YW+oWO
親父さんええな~

680: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 17:57:29 ID:kppVQiBj0
俺は急いで外に出てきたので 
たまたま玄関にあった下駄を履いてきてしまった 

歩く度に、「カラン、カラン」と音が鳴った 
その音が妙に響いて、歩きづらかったw 
俺「うわー、なんだこれw変なの履いて来ちゃったなー」 
カドワキ「え、いいじゃないですか」

681: 名も無き被検体774号+ 2013/04/14 18:02:03 ID:ChGOk1xc0
ええな~ええな~

682: 名も無き被検体774号+ 2013/04/14 18:02:36 ID:AYcXIChi0
今日こそ最後までいくのかな

683: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 18:04:32 ID:kppVQiBj0
カドワキ「涼しげで、良い感じです」 
俺「えーw本当ですかー?w」 
カドワキ「どうですかね?w」 
なんて感じに笑いのタネになってくれたから、良かった 

しばらく2人で、街灯もまばらな夜の道を歩いた 
どこからともなく虫の音だけが聞こえた 

家の中は暑いけど、外は本当に涼しげだった

684: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 18:08:13 ID:kppVQiBj0
俺「カドワキさんは、ピアノを弾くんですか?」 
俺は気になっていた事を唐突に質問した 
カドワキさんは一瞬「なんでそれを」みたいな表情をしたけど 

すぐに納得して話し始めた 
カドワキ「ああ…弾くというか…弾いてた、が正しいですかね」 
俺「え、今は弾かないんですか…?」 
カドワキ「いや、今も好きなんです…けどなんというか、弾く時間が…」

685: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 18:12:18 ID:kppVQiBj0
俺「ああ、忙しいんですよね…」 
カドワキ「ええ、今日もさっき帰ってきたので…」 
凄く寂しそうな顔になってしまっていた 

俺「でも、トロフィーとかあったし、やっぱり上手なんですよね?」 
カドワキ「ああ、あれは…」 
俺「なんかそういう道を目指そうとか、考えなかったんですか?」 
すると、カドワキさんはしばらく黙ってしまった

686: 名も無き被検体774号+ 2013/04/14 18:14:26 ID:AfhOJrVD0
夢を持ってがんばってる最中だったとしたら 
ペースはゆっくりでいい。 
丁寧に書いてくれたほうがいいな、俺は。 
落ちにくいビップラなんだしさ

687: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 18:14:42 ID:kppVQiBj0
カドワキ「そんな風に思ったことも…ありましたね」 
そう言って寂しそうに笑ってみせた 
俺は、「じゃあなんで…」と言いかけてやめた 
きっと何か理由があったんだろう 

俺「俺、カドワキさんのピアノ聞きたいです」 
そして思わず、こんな事を言ってしまった 

カドワキ「え……」

689: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 18:28:53 ID:kppVQiBj0
すると、カドワキさんはたちまち笑顔になったんだ 
こんな顔が見れるなんて、って少しドキッとしたよ 

カドワキ「本当ですか…?」 
俺「ええ、すごく聴いてみたいです」 
するとカドワキさんは、履いていたレギンスのポケットから鍵を取り出した 
銀の輪に、鍵がいくつもついていた

691: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 18:40:15 ID:kppVQiBj0
俺「なんですか?それ…」 
カドワキ「いいからいいから」 
そう言うと、カドワキさんは少し早足で、俺の前を歩き出した 

普段は割と冷めてる事が多いカドワキさんが、やけに楽しそうになった 
そしてしばらく歩いて、小さな家のような、施設のような建物が見えた 
カドワキ「ここです…」 
俺はワケが分からなくて、「はい?」と間抜けな返答しかできなかった

694: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 18:58:18 ID:kppVQiBj0
カドワキ「ここは何というか…公民館みたいな…」 
俺「あ、なるほど…でもなんでここに?」 
そう言うと、カドワキさんはニコッと笑った 

カドワキ「ピアノがあるんです」 
俺「なるほど…」 
俺が一人で納得してると、カドワキさんは先に行って 
「こっちですよ」と手を振って呼んだ

695: 名も無き被検体774号+ 2013/04/14 18:59:43 ID:pZD295cw0
曲がり角は気をつけろよ!! 
(カドハキ)

696: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 19:09:24 ID:kppVQiBj0
カドワキさんは入り口の引き戸を開けていたので、俺は不思議に思った 
俺「でもなんで鍵を…?」 
カドワキ「ああ…お父さんが町内会の役員?なんで…」 

俺はなんでそれをカドワキさんが持ってるんだろうってさらに不思議に感じたけど 
それ以上は突っ込まないことにした 

カドワキ「すごくちっちゃくて、一階建ての大広間と休憩室しかないんですw」 
確かにそうで、中に入ると板張りの広間しかなかった

697: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 19:15:34 ID:kppVQiBj0
俺「でも、案外広いんですね」 
カドワキ「そうですかねw」 

中が予想以上に蒸し暑かったので、二人して窓を開けていく 
「虫が入ってきそうですね~」「ありますあります」なんて言いながら 

そして、広間の隅っこにピアノが一台置いてあった 
その場に置いてあったはたきでパタパタとしながら 
カドワキ「久しぶりだなー」 
とカドワキさんはピアノを開けた

698: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 19:26:49 ID:kppVQiBj0
カドワキさんはもうニコニコして、椅子をギコギコ引いて場所を調整した 
「よし」と言って椅子に座って、腕まくりをした 
そして俺の方を向いて、「どんなのがいいですか?」と聞いてきた 

俺はその顔があまりに明るくて、瞬間ドキっとして 
「一番思い入れのある曲を…」と言った 

カドワキ「そうですか…実は」

699: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 19:29:28 ID:kppVQiBj0
カドワキ「私…この場所で、初めて人前で演奏したんです」 
カドワキ「確か小学生の時…地区の行事で」 
俺「あ、そうなんですか」 

カドワキ「だから今日も…なんとなく緊張します」 
そう言って、ピアノの前ではにかんだ 
その姿が印象的で、すっごく惹かれてしまった 

カドワキ「じゃあ、その時に弾いた曲、いきますね」

701: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 19:36:05 ID:kppVQiBj0
俺は、「やった」と言って拍手をした 
彼女はすぐに真剣な顔つきになって、ピアノの上に手を置いた 

目の前で、優しくて静かな旋律が流れ始めた 
生まれて初めて、誰かに自分のためだけに演奏してもらって 
なんとも言えない、とても不思議な気分だった 

大学時代、一瞬バンドにいたからキーボードは知っていたが、 
クラシックのピアノは、また全然違った

702: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 19:40:17 ID:kppVQiBj0
凄く雰囲気のあるウットリとした曲で、 
殺風景な広間の中が、ピアノの旋律で満たされてく感じがした 

時折、弾いてる最中に彼女が笑顔をこぼすので 
俺もそれに合わせて笑って頷いた 
すごく、楽しそうに、本当に楽しそうにピアノを弾くんだ 

月並な感想だけど、本当に感動したんだ 
目の前でピアノが演奏されて、本当に心を打たれたんだよ

703: 名も無き被検体774号+ 2013/04/14 19:44:13 ID:zY7YW+oWO
ずっきゅーん 
しえん

704: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 19:50:23 ID:kppVQiBj0
曲が終わると、俺はすぐさま拍手して 
「すごい!!よかったー!」と声を上げた 
カドワキさんは照れくさそうに「ありがとう」と笑ってくれた 

本当に印象的なメロディーと優しい曲調だった 
俺「今のは、何ていう曲なの?」 
カドワキ「渚のアデリーヌっていう曲です」 

俺「へえ…いい曲だったなぁ」 
カドワキ「簡単な曲ですよwもちろん小学生にも弾ける…」 
俺「いえいえ、すごく良かった!」

705: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 19:57:05 ID:kppVQiBj0
俺はものすごくワクワクした 
カドワキさんは、なんて魅力的な人なんだろうって思った 
俺「いいなあ…ピアノが弾けるってすごいなぁ…」 
そう言って感心しきりだった 

カドワキ「ちょっと調律がずれてますね…w」 
そう言ってカドワキさんも嬉しそうにしていた 

俺がよっぽど期待の眼差しを向けていたのか、 
カドワキ「他にも何か弾きますか?w」 
と言ってくれた

706: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 20:06:42 ID:kppVQiBj0
俺「聞きたい聞きたい!」 
そう言うと、カドワキさんは笑って頷いてくれた 

カドワキ「じゃあ、私が一番好きな曲を…」 
そう言って、またあの真剣な顔つきになってピアノに手を伸ばした 

弾き始めた途端、鳥肌が立った 
綺麗だし…聞いたことがあった 
どこでかは分からないが、聞いたことのある曲だった

707: 名も無き被検体774号+ 2013/04/14 20:08:36 ID:5c5G35Ym0
見てる

708: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 20:14:50 ID:kppVQiBj0
前半は静かにゆっくりと、物語が始まる感じで 
段々、段々と物語のピークに向かって曲がうねって行く感じ 
そして、物語は情熱のピークに達して、俺はそこで完全に持っていかれた 

「すごい」とか「きれい」とかじゃなく、文字通りもう言葉では表現できない感覚 

ずっと自分の殻に篭もって引きこもって過ごしていた俺 
この世は馬鹿ばかりで、誰も俺のことを分かってくれないとか思っていた 
そしてそんな俺はもっとクズで、この世は心底終わっていると思っていたこと

709: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 20:21:12 ID:kppVQiBj0
それがどうだ、今目の前にある世界は 
こんなにも美しい世界は、ちゃんとあるんだなぁ… 
カドワキさんの奏でるピアノを聴いて、そんな事を思ってしまったんだ 

曲が終わると、俺は涙目になって笑いながら 
「だめだ…本当に良かった。上手く言えない」 
って言いながら必氏に拍手した 

俺「良かったよ!マジで良かった!」 
俺はカドワキさんに向かって何度も何度も言った

711: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 20:33:33 ID:kppVQiBj0
何故か、カドワキさんも少し涙目になっていた 
カドワキ「ありがとうございます」 
そう言って俺の方を見て笑ってくれた 

カドワキ「これは、リストの愛の夢って曲です」 
俺「そういう曲なんだ…聞いたことあったよ…」 
カドワキ「有名な曲ですよね」

712: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 20:35:52 ID:kppVQiBj0
カドワキ「聴いてくれて、ありがとう」 
カドワキ「久しぶりに誰かに聞いてもらえて、凄く嬉しかったです」 
カドワキさんは、満面の笑顔で俺に向かってそう言った 

俺「いえいえ…こんな機会滅多にないから…素敵だった」 
そう言うと、カドワキさんはまたニコニコして、 
「そろそろ行きましょうか」と言って席を立った

713: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 20:39:26 ID:kppVQiBj0
2人で、何か少し恥ずかしなるくらいニコニコしながら 
広間の窓を閉めて、電気を消して、 
公民館の玄関に鍵をかけて、外に出た 

外に出ても、あの綺麗な旋律の余韻がまだまだ残っていた 

俺「とっても贅沢な演奏会だったよ」 
カドワキ「そうでしたかw」 
なんだか、とても幸せな時間が流れているように感じた

714: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 20:41:33 ID:kppVQiBj0
また、街灯のまばらな夜道を2人で歩き出す 

俺「あの場所は、絶好の演奏スポットだねw」 
カドワキ「ほんとですねw」 
俺「よく使うの?」 

カドワキ「たまに…ですね」 
カドワキ「昔はよく、お父さんと行ったりしてました」

717: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 20:44:56 ID:kppVQiBj0
俺「あ、そうだ」 
俺がそう言うと、カドワキさんは振り返って「はい?」と言った 

俺「こんな時間まで外にいて…お父さんに何も言われない?大丈夫?」 
カドワキ「ああ…大丈夫というか…」 

カドワキ「お父さんは…もういないんで」 
俺「え?」 
カドワキさんはそう言うと、上を見上げた

718: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 20:49:56 ID:kppVQiBj0
カドワキ「去年亡くなったんです」 
俺「あ…ご、ごめん…」 

カドワキ「いえ、全然大丈夫です」 
カドワキ「このどこかに、多分いるでしょうから…」 
そう言って、カドワキさん夜空を指さした 

その日は雨続きの毎日には珍しく晴れた日で 
空には満天の星が光っていた

719: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 20:55:26 ID:kppVQiBj0
カドワキ「だから今日は、とっても懐かしくて」 
カドワキ「少しだけ、少しだけ思い出しちゃいました」 
カドワキさんは静かに話し始めた 

カドワキ「愛の夢は…あの場所でお父さんに聞かせた事があって…」 
カドワキ「今日の〇〇さんみたいに喜んでました」 
俺も、だまってうんうん、と頷く

720: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 20:59:13 ID:kppVQiBj0
カドワキ「もう、随分昔の事なんですけど…」 
そう話しながら、カドワキさんは次第に涙を流し始めた 

カドワキ「お父さんは、ピアノを弾く私をいつも応援してくれてました…」 
カドワキ「だから、私はずっと頑張ってこれた…」 
カドワキ「いつだって客席で、お父さんが笑顔で見ていてくれたから…」 
泣きながら必氏に、でも確かに、カドワキさんは話す 

俺も、もらい泣きで泣きそうになるのを必氏にこらえた

723: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 21:06:49 ID:kppVQiBj0
カドワキ「お父さんは一人で、ずっと私を育てて、いつも苦労してて…」 
カドワキ「だから、ピアノを弾いてお父さんの笑顔が見れるのが、嬉しかったんです」 
泣きじゃくるカドワキさんに、俺はうんうん、と真剣に答えた 

カドワキ「私は、音楽の先生になるのが夢でした」 
カドワキ「大好きなピアノとずっと一緒で、生きて行きたいと思って…」 
カドワキ「でも…でも…」 
俺「でも…?」

725: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 21:12:51 ID:kppVQiBj0
カドワキ「私が高校生の時に、お父さんが入院したんです」 
カドワキ「うちは…元々…そんなに裕福じゃないからぁ…」 
彼女はさらに息を大きく上げて泣き始めた 

カドワキ「大学への進学を諦めて、働くことにしたんです」 
カドワキ「それで、少しでもお父さんの支えになろうって決めたんです…」 
カドワキ「そしたら、お父さんは最後まで「俺のせいで夢が叶わなくてごめんな」なんて言うんです…!」

726: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 21:18:43 ID:kppVQiBj0
カドワキ「でも、違うんです…違うんです…!」 
カドワキ「私が自分で決めたことなのに…なのに…」 

カドワキ「私は、ピアノが好きでした。音楽の先生になるのも夢でした」 
カドワキ「でも、お父さんがいなくなってから、それに何の意味があったんだろうって、凄く悩んでました」 
カドワキ「だから、ピアノもあまり弾かなくなってました。どうせもう、誰も聴いてくれないから」 
彼女はグスグス言いながら、必氏にしゃべり続けた

727: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 21:22:48 ID:kppVQiBj0
カドワキ「ごめんなさい。だから前、ニートだって言われた時、あんな風に怒っちゃったんです」 
カドワキ「正直、羨ましかったんです。だからあんな事言っちゃって…」 
俺「いえいえ、全然いいんですよ…」 
俺「むしろ、こっちこそ申し訳ない…」 

そう言うと、カドワキさんの涙でグシャグシャの顔が少しだけ笑顔になった 
カドワキ「〇〇さんに会えて、良かったです…」 
俺「え、どうしてですか?」

728: 名も無き被検体774号+ 2013/04/14 21:24:25 ID:X55dBnh20
物語が走り出してるな… 
このまま「愛の夢」のサビみたいな情熱的な結末に向かうのか?

730: 名も無き被検体774号+ 2013/04/14 21:29:21 ID:zY7YW+oWO
>>728 
くさいこというなおまえ 
嫌いじゃないけど

729: 名も無き被検体774号+ 2013/04/14 21:28:15 ID:2KR8UZRf0
(;ω;)

732: ◆GZ9LcuBAFk 2013/04/14 21:34:18 ID:kppVQiBj0
カドワキ「なんとなく、またピアノを弾く意味が見つかったというか…」 
俺「ああ…」 
カドワキ「この前もあんなに面倒見てもらって…」 
カドワキ「正直、すごく嬉しかったんです」 

俺「いやいやそんな…」 
カドワキ「これからも、私弾きますから。また、聴いてくれますか?」 
そう言って、俺の方を見つめてきた 
俺「うん、是非。今日のコンサートも凄く素敵だったよ」 

そう言うと、「コンサートってw」って笑ってくれた

733: 名も無き被検体774号+ 2013/04/14 21:36:29 ID:AqQ1ZEFP0
はよはよ


【超感動長編】クズな俺でも夢を持った
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引用元: クズな俺でも夢を持った