203: 癒されたい名無しさん 2007/02/28 23:29:38 ID:DdiMuzbj
私は父が嫌いだった。 
ギャンブルでお金をすったり、酒飲んで酔っ払ったりしてよく母を困らせていた。 
でも、優しい父だった。 
優しいだけの父だった。 

そんな父母の仲は悪く、喧嘩が絶えなかった。そんなある日、私が7歳の頃だ。父母はとうとう離婚をした。 
私は四人兄弟だった。四人とも母が引き取ることになった。 
母は一生懸命働いていた。 
私たちを養う為だ。 

そして数年が経ち、私が十五になった冬。 

父が脳溢血で倒れた、という話を母から聞いた。 
左脳がやられていて、いわゆる失語症、並びに右半身不随となった。 
私はすぐに父に電話した。 
父は記憶をも失ってしまったらしく、私が誰かもわからなかった。 

「お前、誰や」 

舌ったらずの口でそう言われたとき、あまりにもショックが大きすぎて、言葉も出ずに私は泣いて電話を切ってしまった。 

続く

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204: 癒されたい名無しさん 2007/02/28 23:41:57 ID:DdiMuzbj
上の続き 

その後、私は姉に連れられて父が入院する病院へいった。 
母には秘密だった。母は、私達が父と会うのをあまり快くは思っていなかった。 
そして、ベッドの上に父は居た。頬は痩せこけ、昔の優しさに満ちた父の姿はどこにもなかった。 

私は姉に縋って泣いた。 
こんな父を見たことはなかった。 

父は私たちに気が付いたようだったが、一瞬誰だかわからないのか、首を捻ってぽけっとしていた。 
そんな父に姉は、「〇〇と、△△だよ」と自分と私の名前を告げた。 
父は思い出したように、目を丸くさせ、涙を零した。 

「ごめんな……ほんとうにごめんな……」 

最初は何を言っているのか、よく聞こえなかった。だけど、父は何度も繰り返し、私たちに詫びていた。 

「許してくれ……ごめんな……来てくれてありがとう………」 

私は号泣で前も見えなかった。姉も泣いていたようで、鳴咽が聞こえた。 

私は、父が嫌いだった。 
優しいだけの父が嫌いだった。 
だけど、今は心から大切にしたいと思う。 
大切な父さんへ、不出来な娘より。 
私はあなたが大好きです、父さん。何時だって会いに行くから、どうか悲しまないでください。

205: 癒されたい名無しさん 2007/03/03 13:55:44 ID:ou2jJd+A
みんな一回ばあちゃんのスゴロクという作品を読んで欲しい

引用元: 【泣ける話】